
この現場が
初めてのヤマだった。
まだ、重さんの補佐役だが
俺にとっては、重要なヤマだった。
合図が入り次第
このビルの非常階段から
向かいのビルの窓を蹴破り
突入する手筈になっている。
三階付近には、俺と重さんが
二階には、徳さんと石崎が
待機していた。
ホシは多分、三階の雀荘にいる。
息を潜めて、合図を待った。
街のネオンだけが響く。
突然、階下で
微かに男性の声があがった。
重さんの無言の指示で
俺は息を殺し、階下へ降りた。
手を沿わせた、壁が冷たい。
見ると、倒れた徳さんが
石崎に抱かれている。
同期の石崎は、首を振りながら
「急に苦しみだして…」
と動揺していた。
徳さんは白眼をむいて
僅かに痙攣している。
心臓か?脳か?
脈に手をやる。
その時、にわかに無線が鳴った。
突入の知らせ。
「石崎!行け!」
俺は、徳さんの背中を受け取った。
石崎が、俺の背中を飛び越えていく。
まだ息がある。
無線で救急車を頼み
年のわりに大柄の徳さんを背負うと
俺は階段を駆け降りた。
階上では、発砲音が響く。
「死ぬな、徳さん、死ぬな」
徳さんは、一命を取りとめ
集中治療室に入っていた。
しばらくして
重さんが待合室に現れた。
「すまなかったな」
重さんの分厚い手を、肩に感じた。
――お前がこのヤマを必死に追ってたのは
よく、わかってたのにな。
そう言ってるみたいだった。
ホシに初めて遭遇した日
俺は逆上し、そして逃した。
ホシは、交番勤務だった親父を
酔って撲殺した男だった。
「ワッパはお前がかけろ」
重さんは、今日の張り込みで
言ってくれていたのだった。
「お前が徳さんをすぐに運ばなかったら
きっと助からなかったよ」
重さんの手に、力がこもる。
自動ドアの扉が
唸りをあげて開き
バタバタと人が入ってくる。
小柄の中年女性が叫んだ。
「重さん!」
重さんが、声を掛ける側に
15、6歳の少年が、うつむいている。
そうだ。
徳さんを死なせずに済んで
よかったんだ。
握りしめていた警察手帳が
闇に蒼く、静かに光っていた。
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これはいっぺん ー I can't stop reading you.の
「お題付800字小説」に参加するために創作しました。
お題。
■初めて会った日/非常階段で/手帳が■
★何故か、こんなものを
書いてしまいました。
全く、考えてもいなかったのに。
800字って
謎…。
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