2005年12月04日

使命。





この現場が
初めてのヤマだった。

まだ、重さんの補佐役だが
俺にとっては、重要なヤマだった。



合図が入り次第
このビルの非常階段から
向かいのビルの窓を蹴破り
突入する手筈になっている。

三階付近には、俺と重さんが
二階には、徳さんと石崎が
待機していた。

ホシは多分、三階の雀荘にいる。

息を潜めて、合図を待った。
街のネオンだけが響く。





突然、階下で
微かに男性の声があがった。

重さんの無言の指示で
俺は息を殺し、階下へ降りた。
手を沿わせた、壁が冷たい。


見ると、倒れた徳さんが
石崎に抱かれている。

同期の石崎は、首を振りながら
「急に苦しみだして…」
と動揺していた。

徳さんは白眼をむいて
僅かに痙攣している。

心臓か?脳か?
脈に手をやる。



その時、にわかに無線が鳴った。

突入の知らせ。



「石崎!行け!」

俺は、徳さんの背中を受け取った。
石崎が、俺の背中を飛び越えていく。


まだ息がある。
無線で救急車を頼み
年のわりに大柄の徳さんを背負うと
俺は階段を駆け降りた。


階上では、発砲音が響く。


「死ぬな、徳さん、死ぬな」








徳さんは、一命を取りとめ
集中治療室に入っていた。



しばらくして
重さんが待合室に現れた。

「すまなかったな」

重さんの分厚い手を、肩に感じた。

――お前がこのヤマを必死に追ってたのは
   よく、わかってたのにな。

そう言ってるみたいだった。




ホシに初めて遭遇した日
俺は逆上し、そして逃した。


ホシは、交番勤務だった親父を
酔って撲殺した男だった。



「ワッパはお前がかけろ」

重さんは、今日の張り込みで
言ってくれていたのだった。





「お前が徳さんをすぐに運ばなかったら
 きっと助からなかったよ」

重さんの手に、力がこもる。




自動ドアの扉が
唸りをあげて開き
バタバタと人が入ってくる。
小柄の中年女性が叫んだ。
「重さん!」



重さんが、声を掛ける側に
15、6歳の少年が、うつむいている。




そうだ。
徳さんを死なせずに済んで
よかったんだ。


握りしめていた警察手帳が
闇に蒼く、静かに光っていた。





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これはいっぺん ー I can't stop reading you.
「お題付800字小説」に参加するために創作しました。

お題。
■初めて会った日/非常階段で/手帳が■




★何故か、こんなものを
書いてしまいました。

全く、考えてもいなかったのに。

800字って
謎…。




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ニックネーム 葉月 しう at 00:00| Comment(1) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月14日

ヒーロー。

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僕は岩にしがみつき、上を目指す。
指先が白い。息も、空も。


この茶色い壁を登り切れば
あの男の欲しがる、青い蝶がいる。



ネクタイが苦しい、緩めたい。
だけど、今、手を離せば
僕は落ちてしまう。

額から伝う汗で、目が痛い。







僕は、通勤で満員の列車に乗って
吊り皮にぶら下がり、眠っていた。
だけど、目覚めると
僕は座っていて
人が消えていた。




窓の外は、みたこともない草原で
過ぎた景色に、川が見える。


列車は、延々とまらず
やっとドアが開くと、そこは
膝までの草が、果てしなく広がり
それを撫でる風だけが
時折、現れる所だった。



遥か向こうに、白い空を
つき破るほどの裸の山が見える。


ここは何処だ。


風が、ざあっと去っていく。





確かに、いつも降りる駅を
通過してみたいと、思ったことはある。



夢が叶えられず、退屈な日々を
すべて捨ててしまおうかと
帰宅する、暑く苦しい
満員の列車で、何度も
何度も想像した。



だけど、僕を待ち続けて
一緒に遊ぶはずだった
戦隊のヒーローと
悪者の怪物たちに
埋もれて眠る
柔らかなその手に、僕は
今を導かれている。





帰らなければ。




いつか、妻が冗談で

――たとえ死んでも、帰ってくるって約束して

笑って、背中に顔を埋めたことがあった。





帰らなければ。





だけど、もう体が
悲鳴をあげている。
次の岩を、掴めない。



風が男の声を運ぶ。
――どうした、もうやめるか

いや、やめない。

僕は靴を脱ぎ落とした。
あと少しだ。ちくしょう。


――もう諦めたいのだろう

ちがう!諦めたくないんだ!




僕は天を仰ぐ。
白い空を震わす、蝶は何処だ。



一つ、影が見える。
ひらひらひらひら
降りてくる。

あいつか!

僕は振り絞って、目指した。
爪先が痛んだが構わなかった。







登り切ってみたものの、蝶は
とても手の届かない
宙を舞っている。



――どうするね






僕は飛んだ。



蝶が、手の中で砕ける。














気付くと、そこは白い部屋だった。


妻と、息子が
泣きながら、笑っている。


『papaは、やっぱり帰ってきた!』


そう、僕は帰ってくる。

何度でも。

ここへ――






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いっぺん ー I can't stop reading you.のお題で書いて、ボツにした作品。
今回、ふと思い出したから、つまらない願掛け。 



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ニックネーム 葉月 しう at 16:25| Comment(4) | TrackBack(0) | 創作文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月09日

身の回り連想バトンがまわってきた。

nitizyou4.gif

ミメイさんからいただきました
「身の回り連想バトン」なり〜★

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ニックネーム 葉月 しう at 11:39| Comment(10) | TrackBack(2) | ほか。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

 

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